ダイオードスティック(DA)による環跳穴刺激とその低周波鍼通電による坐骨神経痛治療の効果
―下腿・足先の収縮・振動による取穴成否の検討―

 はじめに
 環跳穴低周波鍼通電による坐骨神経痛治療の有効性については第44回全日本鍼灸学会学術大会にて報告したが、その際に取穴の正確さにより低周波鍼通電効果が左右されることを指摘した。
 環跳穴の名前の由来は膝を折り腰部を環のように曲げまたは跳躍しようとするときに踵が本穴に触れるのでこの名がつけられたと云われ、本穴に刺鍼すると下肢麻痺の患者も跳躍出来るようになるからとの説もある。いずれにせよ本穴の正確な刺鍼は下肢麻痺、疼痛などの下肢の異常に特効的な効果を及ぼすので取穴の如何が、その成否に与っている。
 環跳穴に正確に刺鍼されると足先に響が伝わり、低周波鍼通電で下肢が振動するので刺鍼の正確度の判定になると考えられる。
 しかしながら、環跳穴は臀部にあり、その位置は男・女・肥満・痩せなど個人差が激しく、正確な取穴と深刺が必要なため鍼の長さ(2または3寸)が鍵となる場合が多い。

 

 方法

図1 環跳穴の取穴法
(李丁著「鍼灸経穴辞典」東洋学術出版社刊より)

取穴法は図1に示すように、まず患側を上位に横臥位をとって膝を折り下腹部に接近させる。次に術者が同側の手の第一指関節を患者の尾骨にあてて、示指のあたる所を凹圧し圧痛を訴えれば環跳穴とするが、肥満の婦人・男性では第三指のあたる所かまたはその上を凹圧して圧痛を感じる部位を探査する。
 これまで凹圧で取穴していたが、刺鍼しても足先に響きが伝わらない場合が15例に2例はあり、さらに正確な取穴法がないかを模索していたところ、ダイオードスティック(DA)を環跳穴と予想される点に接触すると刺激痛を感じることが判り、刺鍼すればほぼ90%は足先に響きがもたらされることを知った。
 これ以後、指による取穴後必ずDAを接触させ、最も刺激痛を感じる点に刺鍼するようにしている。(写真1)
 DA点に刺鍼する鍼は90mm20号鍼または60mm16号鍼を用い、本鍼を(-)極とし、(+)極は適宜選んで1Hz10分間低周波通電(写真2)を施行すると足先部に律動が走る。(DAは写真3の赤(+)・黒(-)キャップのダイオード棒で柿本医療器発売。サーモグラフィーは日本アビオニクス社製TVS-3300、低周波通電器は全医療器オームパルサーLFP4500である。)

写真1 ダイオードスティックを接触

写真2 低周波通電

写真3 ダイオードスティック

 効果

 座骨神経走行部の下肢麻痺・疼痛患者への環跳穴低周波鍼通電の効果は表1の通り。

年代治療推移(経過)例数回数著効有効不変
60才以下1回または数回の刺鍼で消退201~315
70才以下数回で消退・難治あり201~510
71才以上数回の刺鍼でも難治201~710

表1 環跳穴低周波鍼通電の効果


 環跳穴低周波鍼通電施行前後のサーモグラム比較(代表例71才♀)は写真4に認められる通り、施行前に比し施行後は体温の上昇があり、血行改善が認められる。低周波鍼通電前後のサーモグラムは全例において施行前に比較し施行後は明らかに色調が変化し、全例に血行の改善が認められている。

写真4 環跳穴低周波通電治療前後のサーモグラム
(左:治療前、右:治療後)


  DA効果
 環跳穴取穴に際しDA使用例の環跳穴刺穴の正確度の比較は表2の通り。(正確度を低周波鍼通電による足指の振動を2点、下腿筋収縮を1点、振動収縮なしをマイナス1点とする)。
 DA使用群では明らかに環跳穴刺鍼のミスが少なく、足指まで低周波電通にとる振動が伝わり足部・足底部の異常(痛み・痺れ)に即効をもたらす場合が多い。

 例数足指または
下腿収縮例
足指振動下腿筋収縮振動収縮なし
DA非使用例1510(8点)5(誤取穴)
DA使用例1513(17点)2(誤取穴)

表2 DA使用と非使用の正確度の比較
環跳穴低周波鍼通電の施行記録90例より、DA使用・非使用例を
3月施行分より15例づつアトランダムに選び作成し,比較した。

 

 考察
 下肢の麻痺、疼痛の症例は多く、前面の大腿神経支配部位では衝門穴、急脈穴、足三里穴などに低周波鍼通電を施行し、後面・側面の坐骨神経支配領域では環跳穴、殷門充、委中穴、足三里穴などに低周波鍼通電を施行しているが、下肢の麻痺、疼痛に最も効果的で著効を示すのは環跳穴の低周波鍼通電である。それも低周波通電の影響で、足指振動や下腿筋収縮が発現するほど麻痺や疼痛が消退する場合が多い。
 環跳穴の取穴刺鍼法は鍼灸学校で指導を受けていないので、本法を会得したのは1990年に坐骨神経走行部に麻痺・疼痛を訴え歩行に支障のある40才の女性患者に、李丁著『鍼灸経穴辞典』(291~292頁)を参考に3番3寸鍼を用い足先に得気を感じてから低周波通電を10分間施行した結果、施術30分後に下肢の異常は殆ど消失し、1週間後の再来で全く下肢に異常を感じなくなり、歩行も軽快になったことが環跳穴低周波鍼通電効果の初経験であった。
 その後、下肢の坐骨神経走行部(膝外側部も含む)に異常を訴える症例に対し、ファーストチョイスで施行しているが、表1で示すように患者の高齢化に伴い1回の施術で著効を示す例は少なくなり、数回の施術が必要な場合も多い。また、環跳穴の所在が臀部であるため大きさに個人差が激しく、取穴は困難である。そのために前述の指凹圧で環跳穴と定めた部位にDAを用いて刺鍼し低周波通電をすると環跳穴に正確に刺鍼されていれば足先・下腿に振動または収縮が発生するので、これを刺鍼の正確度の判定にしているが、足底や下腿部の異常は正確に刺鍼されなければ効果が少ない。それゆえに低周波鍼通電時に足底・下腿の動きをビデオ撮影して講演会等では披露している。下肢の麻痺、痛覚に環跳穴低周波鍼通電は是非試して欲しい施術法であり、その取穴法としてDAスティックによる接触で正確度を高めることが可能である。なお環跳穴刺鍼は50mm~80mm程度の深刺なので、事故の起こらぬように慎重に刺鍼することが望ましい。当鍼灸室では述べ2000回以上の環跳穴刺鍼を施行しているが、慎重に刺鍼しているせいか、これまで事故の発生は一度も経験していない。

 

 引用文献
 共同研究者・ヘルスチヒロ鍼灸室(福岡)大淵千尋先生


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御苑鍼灸スポーツマッサージ治療室

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